マゴチのあらい

マゴチのあっさりした白身はどんな料理にも向いている。ここでは夏向きの「あらい」に挑戦してみたい。

マゴチを釣り上げたら首に包丁を入れて活き締めにする。持ち帰ったら手早く料理にかかる。それが鉄則である。

【調理手順】
  1. マゴチを三枚おろしは面倒である。腹を下にしてまな板に置き、包丁で尾の方から背ビレを切る。次に腹を上にして胸ビレを切り取る。全体のウロコを包丁の刃先で取る。
  2. 腹を上にして、カマの付け根に包丁を入れて中骨まで切る。
  3. 肛門から縦に包丁を入れて腹を割く。左手でエラをつかみ出し、その付け根を切り取る。
  4. エラを引っ張ってハラワタを取り出し、頭を切り落とし胸ビレとカマを切り取る。
  5. それから三枚におろす。一枚の身の皮を下にしてそぐように薄造りをつくる。
  6. 熱湯をかけて縮ませて、すぐに氷水に漬ける。引き上げてから水気を切っておく。
タレはポン酢醤油にモミジおろしと葉ネギ。または味噌、日本酒、みりん、酢と辛子少々を練った酢味噌でもいいだろう。
旬は6月から8月。この時期になると脂がのって、淡白でいて味の濃いマゴチならではの味覚が楽しめる。

イサキの水なます

房総半島には、なめろう、さんが、水なますという三点セットのような漁師料理がある。魚の身と味噌と薬味をいっしょにたたいたのが「なめろう」。これを青ジソの葉にはさんで焼いたものを「さんが」。たたいたものを冷たい水に浮かせるのが「水なます」と言う。いずれもアジ、サンマ、タカベ、イワシなどでも作る。どれもそれぞれ旨いものだが、水なますだけはイサキが群を抜いて美味だと思う。
【調理手順】
  1. イサキのウロコをきれいに取り除き、ハラワタをかきだして頭をおとす。
  2. 三枚におろし、腹骨を切り取って皮を引く。
  3. 長ネギ(青い部分)、根ショウガ、青ジソの葉のみじん切りに少量の味噌(赤味噌はあわない)を加える。
  4. 3、の薬味にイサキの二枚の身を合わせて包丁でたたく。
  5. 十分にたたいた後、これを一口大に箸でつまんで、氷で冷やした冷たい水に浮かせる。水に少量の味噌を溶かしてもよい。
この料理のコツはとにかく冷たい水を使うこと。氷を溶かしたばかりの水が一番いい。房総の漁師さんはこの水なますを夏の暑い日の船上でよく楽しんでいる。特に食欲のない時には、絶好の食事となる。
なお、イサキを三枚におろすときは、前もって硬い背びれを取っておくとおろしやすくなる。

サヨリの酢の物

サヨリのその味は淡白な一級品。塩焼きもいいし、丸干しもよろしい。吸い物にしても、ほかの魚では出せない特別上品な味覚を堪能できる。その特有の青臭さを嫌う人もいるが、刺身もまた驚くほど繊細な味だ。しかし、もっともこの魚の上品さを味わいたいのなら、酢の物が一番だろう。

【調理手順】
  1. ウロコを取り、頭を落として、切り口からハラワタを取り除き、大名おろしで三枚におろす。
  2. 次に腹の中の黒い膜を包丁でこそぎ取る。
  3. 塩をして30分ほどおき、水洗いしてから水気をよく拭き取り、皮をむく。
  4. 薄切りにして、これを盛り合わせて土佐酢をかける。
土佐酢は酢、カツオ節のだし汁、砂糖、塩、醤油を好みの量で合わせて沸騰させ、冷ましてから使う。酢の酸味がほどよく薄まり、サヨリの頼りないほど淡白な味に実によくあう。